皮脂の分泌を促すDHTの生成を抑える成分があるからです


サプリメントは、比較的手ごろな価格で入手しやすく、効果が期待できるといわれると、健康や美容に関心がある方なら試したいと思われるかもしれません。

近年ノコギリヤシに含まれる成分が、髪の成長期を短くするジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制し、男性型脱毛症(AGA)の発症による薄毛・抜け毛を改善する効果が期待されるという報告がなされ、ノコギリヤシエキス配合のサプリメントや育毛剤などが販売されるようになりました。

DHTは皮脂を分泌させる働きもあります。
育毛サプリメントもさまざまありますが、その中でも「ノコギリヤシ」のサプリメントが、頭皮脂を抑える作用があるといわれるのはそのせいです。

しかし頭皮脂の過剰な分泌はDHTだけが原因とは限りません。
頭皮の乾燥・生活習慣の乱れ・偏った食生活・過度なストレス・ホルモンバランスの崩れなど、他の理由で皮脂が多く分泌されている恐れもあります。

まずは頭皮脂が過剰分泌される原因を見定めることが必要です。
もしノコギリヤシのサプリメントを利用する場合は、専門家に相談するなどして慎重に行うことをおすすめします。

ノコギリヤシは日本では健康食品として扱われています

ノコギリヤシは米国東部原産の低木のヤシで、北米大陸の南部からメキシコにかけての沿岸部に生息しています。

ノコギリパルメットとも呼ばれ、ヤシ科のハーブの一種で細くて長いノコギリ状のとがった葉がついています。

果実はフロリダのセミノール族が薬用に用いていましたが、現在も伝統療法または民間療法として前立腺肥大による排尿障害・性欲減退・脱毛などに対して用いられています。

海外ではノコギリヤシの果実をそのまま食べるケースもあるようですが、日本では主に果実から抽出したノコギリヤシエキスを配合したサプリメントとして利用されています。

ノコギリヤシは脂肪酸が豊富でそのエキスには、β-シトステロール・オクタコサノール・オレイン酸などの成分が含まれています。

その中でも、β-シトステロールやオクタコサノールには、5αリダクターゼを抑制する作用があります。

実は、前立腺肥大症やAGAの発症はDHTが関与しているといわれています。
男性ホルモンの一種であるテストロステロンと、5αリダクターゼという酵素が結びついて、DHTを産生します。

だから5αリダクターゼを阻害する成分を持つノコギリヤシは、前立腺肥大症やAGAの改善に効果が期待できると考えられ、症状の改善効果を示す論文報告もあります。

しかしその有効性については医学的にまだ明確な評価がされていません。
ノコギリヤシはヨーロッパでは伝統生薬製剤の欧州指令に従い医薬品として認可されていますが、日本では医薬品ではなくあくまでも健康食品なのです。

DHTが薄毛を進行させる要因の一つです


男性の薄毛は、遺伝・男性ホルモンの影響・食事や生活習慣・精神的ストレスなどが原因だと考えられていますが、一つだけでなく複数の要因が関係している場合もあります。

AGA(Androgenetic Alopecia)とは男性型脱毛症の意味で、男性ホルモン(テストステロン)が大きく関わっているといわれています。

髪の毛は、頭皮の中にある毛母細胞が分裂して成長し、毛根から押し上げられて頭皮から出てきます。
毛髪は1年で約15 cm伸びますが、永遠に伸び続けるのではありません。

一定の期間が過ぎると自然に抜け落ちますが、その毛穴の奥では新しい毛髪が成長を始めており、その毛髪に押し出される為に抜け落ちるのです。

このように1本の毛髪が成長し始めてから抜け落ちるまでの周期を「ヘアサイクル(毛周期)」と呼び、活発な細胞分裂によって毛髪が太く長く成長していく2~6年の期間を「成長期」としています。

しかし成長期が短くなると、しっかりと育つ前に細く弱い毛髪のままで抜けやすくなり、薄毛に繋がってしまいます。

本来、テストステロンは髪の毛を強くし、成長を促す作用があるのですが、αリダクターゼという酵素と結びつくとDHTとなります。

そしてこのDHTが受容体と結合すると「TGF-β」という退行期誘導因子を生成します。
この「TGF-β」がヘアサイクルを乱して成長期を短くすることで、薄毛・脱毛が進行すると考えられています。

女性の薄毛はAGAとは異なります

男性に比べると少量ですが、女性にも男性ホルモンがあります。
しかし女性ホルモンの分泌が活発な間は毛髪への影響も男性ほど受けません。

女性ホルモンは、女性の体づくりに大切な役割を担うホルモンで、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類あります。

エストロゲンは髪の成長を促し、髪の成長期を持続させる作用があり、プロゲステロンは毛髪の寿命を延ばす作用があります。

ところが女性ホルモンは加齢とともに分泌量が減少していくので、ホルモンバランスが乱れて、薄毛になるといわれています。

また加齢の他にも、生活習慣の乱れやストレス過多・過度のダイエットなどによっても女性ホルモンが減少してバランスが崩れ、薄毛や脱毛を招く可能性があります。

女性の薄毛は、男性のように頭頂部や前頭部など、局所的な脱毛を引き起こすのではなく毛が薄くなる部分が頭部全体だったり、髪の分け目だったりする点が異なります。

女性の脱毛症は、男性のAGAと区別する為に「FAGA(女性男性型脱毛症)」や「FPHL(女性型脱毛症)」などと呼ばれることがあります。

女性の薄毛の原因は、DHTが原因だとはっきりしている男性のAGAとは違うので、ノコギリヤシのサプリメントの効果は期待できないと考えた方がよいでしょう。

薬を使う場合も、女性に対しては男性のAGA治療薬の有用性が認められなかった研究結果もあり、女性が使用できない薬もあるので注意してください。

サプリメントでも摂取には注意が必要です


消費者庁によると、私達が口から摂取するものは「食品」と「医薬品及び医薬部外品」に分けられます。

サプリメントは食品の中の健康食品に属し、保健機能食品のような機能性等を表示できない「その他の健康食品」に分類されています。

ノコギリヤシのように、DHTの生成を抑制する働きを持つ医薬品は、「フィナステリド(商品名:プロペシアなど)」と「デュタステリド(商品名:ザガーロなど)」です。

これらはAGA治療の内服薬として日本で認可されていますが、肝機能障害や性機能不全などの副作用が起こる可能性があります。

そして日本では女性や未成年への使用は認められていません。
胎児に影響を及ぼす可能性があるので、とくに妊娠中や妊娠の可能性がある女性は、絶対に服用せず、さらに皮膚から吸収される恐れもあるので触らないようにしましょう。

それから成人男性も、服用中は献血を避け、献血をする場合は服用を中止してから間を空けてください。
輸血によって、血中の成分が、女性の体内に入ってしまう恐れがあるからです。

ノコギリヤシのサプリメントは、用法・用量を守って摂取すれば大きな問題はないと考えられており、副作用に関しても胃の不快感などがありますが、比較的軽いといわれています。

しかし多くの健康食品と同様、病気を治したり、予防したりする効果が必ずしも保証されているわけではありません。

その上ノコギリヤシは抗アンドロゲン作用や抗エストロゲン作用などがあり、経口避妊薬やホルモン療法と併用すると、それらの効果に影響を与える可能性があるといわれています 。

また抗血液凝固薬や抗血小板薬との併用により、出血傾向が高まる恐れがあるので、これらの医薬品と併用する場合は、まずは医師の診断を仰いでください。
医薬品もサプリメントも、メリット・デメリットがあることを頭に入れておきましょう。

食品からも頭皮脂を抑える栄養素を摂り入れられます

ノコギリヤシの他にも、さまざまな効能をうたうサプリメントが販売されていますが、一般の食品にも頭皮脂の分泌をコントロールし、育毛を促す栄養成分を含むものがあります。

ビタミンB2

ビタミンB2(別名 リボフラビン)は、糖質・たんぱく質・脂質の代謝を促進し、成長を助け健康な頭皮や髪を育てるのに欠かせない栄養素です。

不足すると皮膚や粘膜の機能を正常に保つことができなくなり、肌あれ・抜け毛・脂漏性皮膚炎・口内炎などをおこします。

必要量を超えると尿中に排泄されるので、通常の食事で摂取する分には過剰摂取による障害の心配はあまりありません。

・ビタミンB2を多く含む食品

豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳

ビタミンB6

ビタミンB6(別名ピリドキシン)は、アミノ酸の代謝を助けるので、体の細胞や筋肉、血管などのもととなるたんぱく質の分解・合成に大きく関わります。

またビタミンB2と同様に脂質代謝にも関与しています。
皮膚や粘膜の健康を維持する働きや神経伝達物質を合成する働きもあるので、不足すると皮膚や粘膜の他、神経系にも異常が起こることがあります。

サプリメントの長期服用などによって過剰摂取した場合は、手足のしびれや痛みなど感覚神経に異常が見られる恐れがあります。

・ビタミンB6を多く含む食品

かつお・まぐろ・牛レバー・さんま・バナナ

頭皮を健やかにし強く美しい毛髪を育てる為には、これらのビタミンだけでなく、たんぱく質や亜鉛・ミネラルなどの栄養をバランス良く摂取することが重要です。

(まとめ)なぜノコギリヤシは頭皮脂を抑えるといわれているのですか?

1. 皮脂の分泌を促すDHTの生成を抑える成分があるからです

ノコギリヤシに含まれる成分がDHTの生成を阻害し、皮脂の分泌を抑制します。
しかし他の理由で過剰分泌されている恐れもあるので、サプリの利用は原因を見定め、専門家に相談するなどして慎重に行いましょう。

2. ノコギリヤシは日本では健康食品として扱われています

ノコギリヤシはAGAの症状改善効果を示す論文報告もありますが、その有効性について医学的にまだ明確な評価はされていません。

ヨーロッパでは医薬品として認可されていますが、日本ではあくまでも健康食品です。

3. DHTが薄毛を進行させる要因の一つです

テストステロンは髪の成長を促す作用があるのですが、αリダクターゼと結びついてDHTとなり、受容体と結合するとヘアサイクルを乱して成長期を短くさせるので、薄毛が進行すると考えられています。

4. 女性の薄毛はAGAとは異なります

女性は、加齢・生活習慣の乱れ・ストレス過多・過度のダイエットなどによって女性ホルモンが減少してバランスが崩れ、薄毛を招く可能性があります。

AGA治療薬には女性が使用できない薬もあるので注意しましょう。

5. サプリメントでも摂取には注意が必要です

ノコギリヤシのサプリメントは治療や予防の効果は保証されませんが、用法・用量を守れば大きな問題はなく、副作用は比較的軽いといわれています。

医薬品と併用する場合は、医師の診断を仰いでください。

6. 食品からも頭皮脂を抑える栄養素を摂り入れられます

一般の食品にもビタミンB2やB6など、頭皮脂の分泌をコントロールし、育毛を促す栄養成分を含むものがあります。

育毛の為には、たんぱく質や亜鉛・ミネラルなどの栄養をバランス良く摂取することが重要です。