脂漏性皮膚炎が悪化して、髪が抜けているのかもしれません
「頭がベタベタする」「大量のフケが出る」「かゆみがある」といった症状がある場合、脂漏性皮膚炎を疑いましょう。
その症状に加えて、髪が抜けるようになったら脂漏性脱毛症へと進行している可能性があります。
このような場合は、皮膚科へ行きましょう。
皮膚科では、脂漏性脱毛症の原因となるマラセチア菌を殺菌する抗菌薬や炎症を抑える抗炎症剤を処方してくれます。
さらに、皮脂分泌を抑えるような生活指導やビタミン剤の処方なども同時に行ってくれるのです。
ただし、髪が抜ける症状には男女差があります。男性に多いのが、「AGA(男性型脱毛症)」です。AGAは、男性ホルモンの一種が髪の成長を阻害して、細く短い髪が増え薄毛になる症状です。
一方、女性に多いのが「びまん性脱毛症」でしょう。びまん性脱毛症は、女性ホルモンの低下によって薄毛になる症状です。
もともと「びまん」とは、「広がる」「まんえんする」を意味する言葉で、全体的に髪が細くなり、ボリュームが少なくなるのが特徴です。その他にも、髪が抜けやすくなる病気があります。
たとえば、「甲状腺の病気」「鉄欠乏性貧血」「薬の副作用」などです。この場合は、病気を治すことが最優先になります。このように、髪が抜ける理由はさまざまです。
自己判断に頼りすぎると悪化するケースもあるため、病院へ行くことも大切です。
目次
脂漏性皮膚炎と脂漏性脱毛症の原因はマラセチア菌の異常発生
「油っぽい食事」「ホルモンバランスの乱れ」「ストレス」などの影響から、頭皮脂が過剰分泌することがあります。
すると、皮脂を好むマラセチア菌が異常繁殖して、赤みやかゆみなどの炎症を起こします。これが「脂漏性皮膚炎」です。
さらに、症状が悪化して毛穴の奥にまで炎症が進むと抜け毛が増えることがあります。
これが「脂漏性脱毛症」です。
両者の原因となるマラセチア菌は、カビの一種の常在菌です。
最近では、このマラセチア菌を殺菌する「ミコナゾール」という成分が入ったシャンプー剤も販売されています。
抜け毛に進行するメカニズム
①食事・ストレス・ホルモンバランスの乱れ
↓
②頭皮脂の過剰分泌
↓
③脂漏性皮膚炎
↓
④脂漏性脱毛症
↓
⑤抜け毛が発生
また、ニキビにはアクネ菌という常在菌が関係しています。
「ニキビ」と聞くと顔のイメージもあるかもしれませんが、実際には頭皮にもできるのです。
ニキビは、皮脂をつくり出す皮脂腺の詰まりからはじまります。
皮脂がたまることで、皮脂腺の袋がだんだん大きくなり、やがて皮脂腺の出口に栓ができます。すると、袋の中で皮脂をエサにアクネ菌が繁殖して炎症が起きるのです。
これがいわいる「ニキビ」で、頭皮にできるニキビを「頭皮ニキビ」といいます。
頭皮ニキビは頭皮にダメージを与え、抜け毛を増やす要因になります。
頭皮では常在菌がはたらいています
「マラセチア菌は脂漏性皮膚炎」「アクネ菌はニキビ」というように、頭皮トラブルには常在菌が関係していることがわかりました。
しかし、これらの常在菌は一定のバランスを保っていれば悪いことはしません。
むしろ、私たちにはなくてはならない存在です。
そもそも健康な皮膚は弱酸性で、中性よりやや酸性に近い状態です。
この状態だと病原菌の繁殖を抑えることができ、肌にとってはベストな環境になります。
たとえば、アクネ菌です。
一見、悪い菌にも見えますが、皮脂腺から出る皮脂を分解して脂肪酸をつくり出し、皮膚を弱酸性に保ちます。
弱酸性とは
「弱酸性○○○」というボディーソープがあるように、弱酸性は肌にとって良い状態です。具体的に、弱酸性とはpH 6をあらわします。
pH(ペーハー、ピーエイチ)とは、水溶液の「酸性・中性・アルカリ性」の性質をあらわす単位です。数値はpH 1からpH 14まであり、数値が小さいほど酸性となり、中間のpH 7が中性です。
なお、肌がアルカリ性に傾くと病原菌が繁殖しやすい状態となり、炎症や傷が治りにくくなります。
常在菌のはたらき
皮膚にも腸のように「悪玉菌」「日和見菌」「善玉菌」が存在しています。
①表皮ブドウ球菌(善玉菌)
・皮脂を分解して、皮膚を弱酸性に保つ
・皮膚をコーティングする
・悪玉菌の増殖を防ぐ
②アクネ菌(環境に合わせて悪玉菌にも善玉菌にもなる日和見菌)
・毛穴で増殖すると、悪玉菌になり、ニキビの原因になる
・皮脂を分解して、皮膚を弱酸性に保つ
③黄色ブドウ球菌(悪玉菌)
・アトピーの原因
・増殖すると、皮膚がアルカリ性になる
④マラセチア菌(悪玉菌)
・脂漏性皮膚炎や脂漏性脱毛症の原因
・増殖すると、皮膚がアルカリ性になる
洗いすぎると常在菌まで落ちます、シャンプー選びは慎重に
頭皮を健康に保つためには、常在菌を落としすぎないことが大切です。当然、常在菌のエサになる頭皮脂も落としすぎてはいけません。洗えば洗うほど、頭皮トラブルの悪循環に陥ります。
洗いすぎの悪循環
①頭皮脂でベタベタする
②洗浄力の強いシャンプーを使う
③ゴシゴシと力を入れて洗ったり、いつも2度洗いしたりする
④頭皮脂&常在菌を落としすぎる
⑤乾燥する&頭皮がアルカリ性に傾く
⑥フケやかゆみが発生する
①から⑥のような洗いすぎで皮膚炎を悪化させるケースがあります。
頭皮に異常を感じたら、皮膚科で診てもらいましょう。
とくに、スッキリとした清涼感がある頭皮用クレンジング剤や洗浄力が強いタイプのシャンプー剤には注意しましょう。このようなヘアケア剤は刺激が強く、頭皮脂を落としすぎて、頭皮が乾燥してしまいます。
だからといって、シャンプー剤をやめるのは不安です。そのようなときは、シャンプー剤の量を減らして使いましょう。
洗浄力とシャンプー剤
シャンプー剤を購入するときには、洗浄力を目安にしましょう。
①洗浄力が優しい=アミノ酸系(ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム・ココイルグリシンナトリウムなど)
人の体にも含まれるアミノ酸を使用したシャンプーです。アレルギー体質や肌の弱い方に向いています。
②洗浄力が強い=高級アルコール系(ラウレス硫酸ナトリウム・ラウレス硫酸アンモニウム・ラウリル硫酸ナトリウムなど)
もっともポピュラーなシャンプーで、効果や香りも種類豊富です。泡立ちが良く、使いやすいのが特徴です。健康的な肌の方には向いています。
③洗浄力が強い=せっけん系(脂肪酸ナトリウム・脂肪酸カリウムなど)
せっけんを主成分としているシンプルなシャンプーです。
せっけんと聞くと肌にも優しいと思いがちですが、洗浄力が強いので注意しましょう。
抜け毛が改善しない場合は病気の可能性があります
セルフケアをしたり皮膚科を受診したりしても、抜け毛が改善しない場合は、他の病気が隠れているかもしれません。
とくに女性は、加齢とともに女性ホルモンが低下して抜け毛が増えるケースもあります。
そのため、女性の薄毛診断は複雑です。
抜け毛に関する病気を確認して、自分に当てはまるものがないか調べましょう。
①甲状腺の病気
「疲れやすい」「だるい」「むくむ」などの症状があり、若い女性に多い病気です。
甲状腺から分泌されるホルモンは、全身の代謝を促すはたらきがあり髪を成長させる作用もあります。
そのため、ホルモンの分泌が少なすぎると、髪が細く弱くなり抜け毛や脱毛につながるのです。甲状腺の病気を専門とする病院もあるため、気になる方は早めに受診しましょう。
②鉄欠乏性貧血
「息切れ」「動悸」「めまい」「顔色が悪い」などの症状が起こります。
血液中の鉄が不足して、酸素を運ぶヘモグロビンがつくれなくなり、やがて酸欠状態になる病気です。
髪は、血液から酸素や栄養を受け取って成長しているため、このような状態になれば髪の成長にもマイナスになります。また、鉄不足は白髪の原因ともいわれます。
バランスの良い食事を心掛け、鉄分が不足しないようにしましょう。
③薬の副作用
薬の副作用で、脱毛することがあります。代表的なものが、抗がん剤です。
抗がん剤は、細胞の成長を抑えるはたらきがあるため髪の成長を妨げるのです。
ネガティブ思考からの脱出が、抜け毛対策になります
「髪がベタつくのが恥ずかしい」「女性なのに抜け毛が多くてツライ」「「薄毛がコンプレックスだ」と思う方も多いでしょう。
髪の問題を抱えていると、どうしても他人の視線が気になり、外出を避けたり、心に壁をつくったりとネガティブになってしまいます。
このような精神状態では、ストレスも大きく、当然、髪にも悪影響を及ぼします。
そこで大切になるのが、モチベーションを上げることです。
「どんな髪型になりたいか」をイメージしてみましょう。
そして、それを実現するために、具体的にどのような行動が必要となるかを考えてください。
たとえば、「バランスの良い食事」「適度な運動」「十分な睡眠」など生活習慣を正すのも、その行動のひとつです。これができない限り、健康的な髪は生えません。
また、病気のリスクも高まります。
さらに、発毛外来や育毛外来といった、専門のクリニックへ行くというのもよいでしょう。
最近では薄毛に関する医療技術が進歩しています。
その他にも、ヘアサロンや専門店に行けば、使いやすくオシャレなウィッグも数多くあります。
信頼できるクリニックや専門店、友人や家族などまわりのサポートを受けながら美しい髪を育てましょう。
髪の問題は、ひとりで悩まないことがポイントです。
(まとめ)頭皮脂によるベタつきやフケで、髪が抜けるのはなぜですか

「頭がベタベタする」「フケ」「かゆみ」という症状がある場合、脂漏性皮膚炎を疑いましょう。
さらに、抜け毛がある場合は脂漏性脱毛症へと進行しているかもしれません。ただし、抜け毛にはホルモンの影響や病気なども関係しています。
皮脂を好むマラセチア菌が異常繁殖して炎症を起こすのが「脂漏性皮膚炎」です。
その症状が悪化して毛穴の奥にまで炎症が進むと「脂漏性脱毛症」になることがあります。
両者の原因となるマラセチア菌は、カビの一種の常在菌です。
常在菌は一定のバランスを保っていれば悪いことはしません。むしろ、私たちにはなくてはならない存在です。
たとえば、ニキビで有名なアクネ菌は、皮脂を分解して脂肪酸をつくり、皮膚にとってベストな弱酸性の状態を保ちます。
頭皮を健康に保つためには、常在菌を落としすぎないことです。
さらに、常在菌のエサとなる頭皮脂も落としすぎてはいけません。
シャンプーを購入するときは、洗浄力の強さを確認して自分の肌に合うものを選びましょう。
セルフケアをしたり皮膚科を受診したりしても、抜け毛が改善しない場合は他の病気が隠れているかもしれません。とくに女性は、加齢とともに女性ホルモンが低下して抜け毛が増えることがあり、女性の薄毛診断は複雑です。
髪の問題を抱えていると、他人の視線が気になりネガティブになります。このような精神状態では、ストレスも大きく髪にも悪影響を及ぼします。
そこで大切になるのが、モチベーションです。なりたい髪型を想像しながら、まわりのサポートを受けて髪を育てましょう。